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 マカオ
DTIブログにようこそ!
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(グロテスク・ホラー注意。)
男の屋敷のとある部屋で、老婆は一人黙々と何かを呟いていた。
すべては順調に進んでいる筈だった。
生まれてから今日までずっと、家の繁栄だけを考え生きてきた。
息子には他の有力大名からの縁談の話もあった。
その縁談が成れば、わが家は更に大きな力と、長きに渡る栄華が約束されている、またと無い好機だった。
だが、あの女がすべてをぶち壊しにした。
あの女が、憎い。
あの女さえいなければ、すべては丸く収まるのだ。
あの女を・・・
ゆっくりと老婆の身体を、ドス黒い影が包んでいった。
夜明けとも言えるほどの深夜に、女は屋敷の二階の廊下を歩いていた。
下級武士とはいえ、武家の女だ。その歩みは整然とし、優雅で、美しかった。
その歩みを少しも崩すことなく、長い長い廊下を進んでいく。
右に二度、左に二度曲がり、二十畳もある居間の横を通り抜け、また右に曲がる。
更に少し歩いたところで、女は一階へ続く階段に差し掛かった。
妊婦にとって階段の上り下りというものは、とても苦しいものがある。
なんせ自らの腹に大きな籠を抱えたような状態で上り下りしなければならない。
しかも腹中、その籠の中には大事な子が宿っている。もし踏み外しでもしたら大事だ。
ふ、とため息をついた女の目に、階段の壁に立てかけてある掛け軸が目に入った。それは鶴と亀を墨汁で描いたものだった。
掛け軸はだいぶ古ぼけており、ところどころ絵が掠れているようだ。きっと長い間あそこに飾られていたのだろう。
女は視点を階段に戻すと、慎重に、ゆっくりと一段目から足を下ろした。
しかし、その時。
ぐらり。
女を背筋が凍るような感覚が襲った。階段の最上段で、完全に前のめりの姿勢。細心の注意を払っていたはずだった。実際、女自身にバランスを崩すような原因は一切無かった。
偶然や不慮の事故ではないならば、一体それは何なのか。何故、女は今、重力という無慈悲な不可抗力に曝されているのか。それは、実に簡単なこと。
女の後ろには、ドス黒い愚鈍の影が立っていた。
偶然や不慮の事故ではない。明確な憎悪と殺意を持った、影。
影の薄い唇は、円弧を描き醜悪な笑みを浮かべる。
女はその影が何者なのか一瞬で理解した。
「ご・・隠居・・・様・・・」
だが女の目がその影を捉えたのはほんの一瞬。空中で一回転し、すぐにその影を見失う。次の女の目が捉えたものは、鶴と亀を墨汁で描いた掛け軸。
しかし、その鶴と亀を墨汁で描いた掛け軸も、滑るように反転していく。
そして長寿をつかさどる二つの生き物は、皮肉にもそのこうべを下に向け、タロットカードの逆位置のように女を嘲笑った。
直後、女は、自らの身体とその腹に背負った籠の重みを、全身に叩きつけられた。
女は言葉にならない言葉と共に大量の血を吐き出したあと、ぴくりとも動かなくなった。もし、女がまともに喋れる状態ならば、この時、一体何を叫んだのだろう。憎悪の叫びか、悲哀の劣情か、延命の懇願か、それともーーーー
階段の踊り場にできた血だまりを見て、影はゆっくりとその憎悪を身体の内にしまった。
身体を包むドス黒い闇がなくなった時、そこにいたのは一人の人間だった。
折れ曲がった腰、深く深く刻まれた皺。
その老婆の顔はいっそう醜く皺枯れていた。
籠女 籠女
籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った
後ろの正面 だぁれ?
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[2007/08/30/23:08][ ↑ ][ ↓ ]
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2008/06/22/日
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2008/04/08/火
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