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 マカオ
DTIブログにようこそ!
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(今回は真面目な小説です。グロテスク注意。)
(この話はフィクションです。実在の人物、団体、病気などとは一切関係ありません。)
●国が総力をあげ、各専門分野のエキスパートを集めた「認死症」研究機関。しかし、その研究機関にも思わぬ弊害があった。認死症を研究する分野があまりにも深層、多岐にわたるため、全体を通しての情報の統合がほぼ不可能だったのである。いくつもの大きな島を作れても、そこに橋を架けられるものがいなかったということだ。
国はこの問題に大いに頭を抱え、研究所の規模を縮小するかどうかの議会も行った。だが最終的に出た結論はその真逆。研究所の予算をさらに上げ、世界最大のスーパーコンピュータを導入するというものだった。
そのスーパーコンピュータの役割は「研究所のすべての情報をリアルタイムに把握し、対照、統合する」という未だかつてない膨大な演算。成功の確立はまったく持って未知数だったが、政府はこの賭けに自国をベッドした。
そしてそのスーパーコンピュータの管理を任されその機材が置かれたのは、研究所の代表取締役とその個人研究室だった。
「ウわぁッ!」
突然視界のすべてが右上にずれる。瞬間、寸前まで俺の頭が存在していた場所を血まみれの男の右手が振りぬいた。男の右腕が風を切る音が、俺が焦りで足がもつれさせ、よろけてしまったことを教えてくれた。
男の右手を上手くかいくぐってかわした様な体勢。手を伸ばせば触れる距離だというのに、男はかまわず俺に突進をかける。
「うををををををををををッ!」
俺の視界は床、天井、床、天井とスクランブル。二人で絡み合いながら転がり回る。回転しながら研究室を出て廊下の壁にぶつかり、ようやく回転が止まったと思った瞬間、男の犬歯をむき出しにした口が目に映る。やばい、やばいやばい!
ドゥン!
全身でもがこうとした時、男の耳元で銃弾が発射された。弾は当たらなかったが発砲の衝撃で男が怯む。その隙を突いて俺はなりふりかまわず男を振り払って逃げ出した。
男に背を向け逃げながら思考する。落ち着け、恐怖を、震えを止めろ。俺の手には拳銃がある。距離をとれば俺の絶対優位だ。勝てる。生きれる。臆するな。良いか俺、なんの躊躇いなく撃ち殺せ!
あと2秒。
あと1秒。
0秒・・・ッ!俺は覚悟を決め、拳銃の撃鉄を起こしながら振り返った。だが、そこに在るべき筈の認死症患者はいなかった。
「!?」
いない!?おかしい、この廊下に人が隠れられるようなスペースはない。どこへ消えた?拳銃に恐れて逃げたのか?違う、ありえない。認死症患者にとって《同族への食欲》以外の感情は存在しないに等しいはずだ。だが、現にやつは消えた。いったい・・・どこへ?
警戒はしていた。だが敵が目の前にいないという安堵感。そのせいで俺は銃を下ろしてまった。それが絶望的状況を招くことを知らずに。
「本当に・・逃げたのだろうか。」
そう呟いた時、目の前に一粒のしずくが落下した。真紅の一滴。全身が、本能がその意味と己の愚かさを痛感した。少しずつ、少しずつ身体を動かし天井を見上げる。俺の想像と一部の違いなく、男は天井に張り巡らされているダクトや配水管にその四肢で張り付いていた。
背筋が凍る。俺は振り返るべきではなかった。そのまま逃げていればこんなことにはならなかった。判断ミス、そして微かな油断。これらはこの状況下では死を招くには充分な要因となる。
男は体を重力にさらけ出して自由落下。俺は心臓と肺が同時に止まったような感覚に襲われる。次の瞬間、俺がどうなってしまうか容易に想像がついたからだ。俺も咄嗟に拳銃を構えようとするが、後出しで間に合うはずもない。体当たりをもろに食らい、男とともにその場に倒れこんだ。
体勢は俺が下で男が上のマウントポジション。もう自分が正常に呼吸できているかさえわからない。必死で拳銃を撃とうとする、が乗り倒された衝撃で落としてしまったらしい、右手に残ったのは空気と油汗。どうすることも出来ない。
男がゆっくりと血まみれの顔を近づける。犬歯をむき出しにした口がニタリと笑うと、俺ののどぶえ目掛けて歯をたてる。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!」
イヤだ、どうして俺がこんなところで、そんな、なんで、こんなの理不尽だ、不条理だ、いやだ、イヤだ、厭だ、嫌だ、否だ、死にたくない、そうだ、俺にはやらなくちゃいけないことがある、世界中の人を救うんだ、こんなところで、いや違う、そんなことはもうどうでもいい、助けてくれ、頼む、今、俺を、殺さないでくれ、イヤ・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「・・アガッ」
・・・??
・・・俺は・・・・生きて・・・いる・・?何で・だ?
俺は認死症患者に襲われた・・はず・だ。
覆い被さられ、銃を失い、なすがまま、やつに喰われた筈だった。
襲われる瞬間の、男の猛禽類のような眼光が網膜に焼き付いている。
なのに、なぜまだ意識があるんだ?・・ウエッ。口に広がる鉄分の味と異物感。俺が恐る恐る目を開くと、男は俺に覆い被さる様にして事切れていた。
俺が状況を把握したのは覆い被さった死体をどかして、タバコを一服フカシてからのことだった。
男は、俺ののどぶえに噛み付こうとした時、真っ赤な白衣を着た男から受けた喉の傷からの出血で息絶えたのだろう。改めて見てみるととんでもなく深い傷だ。これでは損傷後すぐに救急病院に運ばれたとしても失血死は免れなかっただろう。
そして俺の味覚が感じ取った鉄分の味と異物感は、俺の血ではなく、悲鳴をあげ開かれた俺の口にちょうど覆い被さった男の喉とその傷から流れたものだった。
俺の歯にこびり付いていた血と人肉が、男の喉の傷の深さを物語っていた。
・・・疲れた・・・。生き残った達成感、助かった安堵感よりも疲弊感が先立った。研究室に戻ろう。俺はふらりふらりと歩き出した。一歩ずつ、一歩ずつ無地で質素な研究所の廊下に血の足跡を刻みながら。
血の足跡の始まりの場所、生きている人間のいなくなった廊下。残された死体の口から大量の血が吐き出され、一つの言葉を紡いだ。
「ゲボッ、ガッ、ガァフ、、、ァ《危機に》・・・・・《備えよ》」
その後己の役目を全うした死体が口を開くことはなかった。
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[2007/05/20/23:06][ ↑ ][ ↓ ]
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